KEY印-2

金型設計の検討とは?

まず、
金型設計というのは、製品設計ではないので基本、
お客様から製品のモデルデータを頂いて、
それを元に金型を起こしていくという流れになります。

初期の段階ではお客様からのモデルそれを見て
安く簡単に金型を作れないか?を考えていきます。

製作側からみると
出来るだけ、単純な構造で金型を作りたいので
一部形状を、変更してもらえると、
金型構造が単純になり、金型の価格も抑えられる
といった場合などは、
どんどんコチラから提案をしています。

金型製作側は、作りやすくなる
お客様側は、価格が抑えられるようになり
両者ともに幸せになれるのです。

金型製作においては、この過程がいちばん重要で
双方の、希望の着地点を探るのが
金型の打ち合わせということになります。

ザックリいうと
・難しいアンダーカットの処理(スライド・傾斜スライド等)
・ゲートの位置、種類、成形後の
 処理の仕方(2プレートか3プレートが決まる)
を検討していきます。

ということで、
この流れを、今回は「KEY印」で、初期~製品化までの作業を
順にご紹介していきます。

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KEY印の1番最初のデータ

これが、一番初めに頂いたデータです
いわゆる、見積用のデータです。

上から

  • キートップ
  • キートップジョイント
  • ボディ
  • インナーケース
  • フタ
  • 印セット

という、部品構成です。
この部品を、金型にしていきます。

KEY印 初期モデル

CADソフトによるデータの相性

CADのデータのやり取りは、たいてい中間ファイルと呼ばれる
どのソフトでも読み込める、データ形式に変換してやり取りをします。
よく使うデータ形式は3種類くらいありまして

  • ステップ「.stp .step」
  • アイジェス「igs」
  • パラソリッド「.x_t」

をよく使います。
が!
シンクデザインは標準仕様では、「パラソリッド」対応していないため
非常に困ります。その場合は他の形式で,今一度データをもらうようにしています。
オプションつければ、対応可能なのですが。そんなの、標準で付けとけ!と思います。

また、CADソフトの相性というものがありまして、おなじデータでも、
読み込んだらソリッドとして「読み込まれるもの」「読み込まれないもの」や
面が一部ヌケてしまうものがあります。

「シンクデザイン」と相性の悪いソフトは、私の経験では、「NX」ですかね。
「NX」から排出された「ステップ」データは、ソリッドとして初めは読み込まれつつも
一度、ソリッドをバラしてから、再度ソリッド化しようとすると、
あちこちスキマが開いていて、ソリッド化できなくなる事が多いです。

それを修復して、ソリッド化出来るようにするまでに時間がかかります。
入り組んだものだと、修復に5日間くらいかかったり…。
まぁ、
「ThinkDesign」パラソリッドに対応していない時点でなんとなくわかりますね。

KEY印の場合

今回のデータでは、下の2つの部品を除いては
きちんとソリッド化されたまま
読み込むことができました!
しかし、
下の2点のモデルは、ソリッドでもなくサーフェイスでもない
面は閉じていないが、取りあえず固まった状態にしてある状態
「スキン」という状態でした。
この、スキンという状態にすると
サーフェイス一つでも、ソリッド用のコマンドが使えたりして
すごく便利です。そのうち、私のスキン活用法を
ご紹介しますね。

また、下の画像のハイライトされた面が少し変で、
フィレットR共一体化した面になっていました。
この状態は、この「KEY印」で初めて遭遇しました。
なかなかレアです。

この状態を、まず修正していきます。
「フィレットR」なしのモデルを作り
そのモデルに、「フィレットR」を付加していきます。
そのほうが、後々いろんな処理がし易いので。

キートップ

まず、フィレットRを取り除いたものを作り
その後に、Rを付加したカタチにしておきます。
そうすることで、後々面をオフセットさせたり
勾配を付けたり修正がやり易くなります。

まずは、ソリッドにできるようにしつつ
フィレットRを抜いていきます。
とりあえず、「スキン」という中途半端な状態ですが
ソリッドとして扱えるので、そのまま
「インタラクティブモデリング面の削除」で
Rを削除してみます。
なるべく、ソリッドで修正したほうが手間が無く、綺麗に修正できますので
まずは、トライ!!です。

これが→

こうなっちゃう…(涙)

しかし…
上のように、失敗です。
調べたら、やはり面と面の間が開いている状態で
ソリッドになっていなかったのが原因でした。

こうなったら、仕方ない、サーフェイスで
地道に修正していくしかないみたいです。
がんばります。

そして、なんとかRナシを作り上げました
実は、かなり苦労しました!

Rナシ

ここまでくれば、あとはラクです
これに「フィレットR」を追加して完成です。
モデル構造に「フィレット(**)」が追加され確認できます。
今回は、デザイナーさんの案件なので
こういった、金型にフィットさせる為の
モデリング作業は、通常よりとても多くなりますが
私の場合は、喜んで引き受けています。(当たり前)

モデル構造タブ

R付けたモデル

勾配を付ける

金型で製品を作る場合、多少なりとも
「抜き勾配」を付ける必要があります。
ほとんどの場合、お客様のデータには勾配は付いておりませんが
まれに、しっかり考え抜かれた、勾配が付加された状態の
モデルデータを頂ける場合があります。

その場合は、その設計者の意図を勾配の付け方から
読み取って、金型にしていきます。
しかしながら、その上で、提案できるモノがあるときは
提案させていただき、より良い金型を目指していきます。

機構部品の設計者さんは、勾配の重要性に気づいておられる方が多くて
デザイナーさんの方はそうでもない といった傾向があるように思います。

デザイン性が高いものほど、勾配を意識していないと
勾配を付けた時に、少々形が変わるものですから
「イメージと違う!」といったことで、もめる事もありますし
下手をすると、形状が成り立たないというコトにもなりますので
そういう観点からも、このサイトを活用して頂ければ幸いです。

また、
エンドユーザーからすれば、この金型から生まれた部品を使った製品を
どれだけ愛して手に入れるかわかりませんし
何か月も、何年も「おこずかい」を貯めて手に入れるものか
計り知れませんので、毎回良いものが取れるように工夫しています。

抜き勾配の解析

今回の「KEY印」は場合は勾配が付いていませんでしたので
早い段階で、勾配を付けたモデルを、提示したほうが良いと思ったので
勾配もつけちゃいます。

右の図、赤い部分は
勾配が付いていない部分
つまり、たち壁が90°で立っている状態
この部分に勾配をつけていきます。

この時に、「フィレットR」を
全て取り除いたモデルがあると
ものすごく、作業がしやすいです。
そして↓

勾配なしモデル

勾配つけ完了

勾配を付けて、完成です。
表の「緑色」の部分は、固定側なので「3°」
ウラの「オレンジ」の部分は「1°」で設定しました。
一部嵌め合いの部分は、勾配ゼロのままにしてあります。

この部品の場合は、勾配方向に長くない製品でしたので
カタチの崩れは、ほぼ分りませんでした。
これで、「キートップ」は完成しました。

次回は、ボディーをやっていきます。